スティーブモーターサイクルサプライ : DUCATI 748R INTEGRALE
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DUCATI 748R INTEGRALE

スティーブの技術とノウハウを注ぎ込んで仕上げた特別な748R


748Rが入庫しました。
スティーブ管理ユーザーさんの車両ではなく、整備履歴などもわかりません。
しかしながら、ドゥカティ社が送り出した「本気のスーパースポーツ」である748Rという貴重なモーターサイクルでしたので、じっくりと仕上げてみました。時系列での作業状況についてはRyu’s InsideReportをご参照下さい。

入庫時すでに全塗装してあったものの…あまりにも雑な塗装だったので、思い切ってYUHIRO&Mクオリティにすべく外装一式やり直しました。
カラーリングについては悩みましたが、ずっとやってみたいと思っていた私が大好きなFIAT131アバルトをモチーフに塗装をお願いしました!
決してゴテゴテにならないしっとりとした仕上がりはさすがの一言。タンクにはABARTHのエンブレムを貼ってみましたが結構似合いますねぇ。
 
ABARTHとは…?
「アバルト」と読みます。
FIAT社のクルマをベースにチューニングを施し、レースの世界で
大活躍したイタリアの自動車メーカーです。
後にFIAT社に買収されてからもFIATのレーシング部門として活躍しました。  

詳細はwikipedia(→リンク)をご参照下さい
 

 

この748R、入庫した時はあまりにも調子が悪い状態!
インジェクションセッティングが合っていないために、いわゆる「ドンツキ」が激しく
交差点からの脱出などの場面で非常に気を使わなければなりませんでした。
バランスが狂っているため余分な燃料が流れ、気化しないままシリンダー内に
送り込まれて燃焼しきれず排出されるという地球に優しくないフィーリング。
(お風呂のシャワーの蛇口をちょっとだけ開けると水がチョロチョロと
流れてきますが、あんな感じです)
 
サイレンサーの抜けが悪いので高回転域の伸びも悪く、これは標準装備の
ロムも関係しているので仕方がないといえば仕方が無いのですが、
バルブにこびり付いたカーボンと巣穴の開いたバルブシートのために
圧縮が落ちていることも大きな要因と考えられます。
 
要するに「メチャメチャ乗りにくい」バイクでした。
 
おそらく前オーナーは、748Rが持つ「一番美味しいところ」を味わっていないハズ。
「ああ、こんなモンなんだ~」と思われて売却されたのかもしれません、寂しいことです。
こういう車両は、まず徹底的な初期化からはじめなければなりません。
 
個人売買でポルシェを買って、ポルシェ専門店に出向き、きちんと整備したら
一体いくらになるのか?と気になりつつ世間話だけして帰ってしまうような状況
と言えば解り易いでしょうか?わかりにくい?(笑) 
 

主な項目として
 
●シリンダーヘッド修正及び調整
●インジェクションセッティング
●クラッチの最適化
 
この3つのポイントは748R最大の鬼門!とも言えるものですが、
裏を返せばこの3つのポイントさえ抑えておけば、
高回転をキープして進入速度を落さずくるりと向きを変えて
全開でコーナーを脱出するという場面で748Rの醍醐味を充分味わう
ことができるのです。
 
ただし、そこは748R。
専用エアボックスにシャワータイプのインジェクションシステムという
他のモデルとは全く違うシステムを持つため、セッティング方法も全く違います。
 
スリッパークラッチは標準装備するものの、スリッパー部が面接触なので
点接触(ボール入り)のSTM製EVOクラッチに交換しました。
スリッパー作動時のショックが軽減され、メインテナンスサイクルも伸びます。
※しかし定期的なメンテは必須。
シリンダーヘッドはバルブシートカット、バルブフェイス修正を施し、メッキが剥がれたロッカーアームなどは交換しつつ適正クリアランスにてヘッドを組み上げます。経験と技術、集中力が必要ですが楽しい作業です。
テルミニョー二のカーボンサイレンサーに合わせて、パフォーマンス製ロムに交換してストリート重視のセッティングを施しました。また、この年式の748Rは中間パイプが45mmなので50mmに交換しています。
クラッチ周辺のベアリング、オイルシール類はすべて交換、このあたりは通常メンテで見過ごされがちですが、マメに交換した方が良いです。クラッチプッシュロッドもベアリングともに重要なチェックポイントです。
 

シャーシに関しては不足は無いので、足回りを中心に手を加えます。
前後サスペンションは定番のオーリンズを柔らかめにセット。
(この年式はSHOWA製サスが標準装備です)
次に748にこそ絶対必要であると言える軽量ホイールはあえてフロントホイールだけ
マルケジー二のマグホイールを奢っています。フロントだけというのは別にケチっ
たわけではなく(笑)。リアホイールは5.5インチのノーマルサイズを
使いたかったからです。タイヤはニューディアブロスーパーコルサSPを装着。
 
さて、今回748Rを仕上げるにあたりどうしても使いたかったパーツの一つが
鋳鉄製のフロントブレーキローター。
ステンレスローターが主流ではありますが、どうしても鋳鉄のあのフィーリングが
忘れられません。748Rとのマッチングをテストする意味で採用しました。
 
しかし、鋳鉄唯一の欠点ともいえる「錆び易い」という点は見逃すわけにはいきません。
錆が落ち難い部分にパウダーコートを施しました。
KADOWAKIさんにはかなり無理言いました…ありがとうございます。
フロントホイールはマルケジーニのマグホイールを装着。
鋳鉄ディスクに合わせて鋳鉄ローター用ディスクパッドに変更。(最近は鋳鉄専用パッドがラインナップから消え、調達も困難です)
鋳鉄ディスクはフィーリングも最高なんですが、錆び易いのが欠点です。
いったん錆びると落ち難い箇所をKADOWAKIさんにお願いしてパウダーコートしてもらいました。
リアホイールは敢えてノーマルを使用していますが、前後共にパウダーコーティングで同色に仕上げています。タイヤは新しいピレリのディアブロスーパーコルサSP
写真の黒いパーツはエンジンカットオフスイッチで、もしもの転倒時、自動的にエンジンを自動的にカットしてくれます。
 748/996系のフューエルタンクは転倒時に必ずフレームからズレてしまいます。フューエルタンクがエアボックスの蓋の役目も兼ねていますので、タンクがズレると転倒の際のゴミが混入し易くなってしまいます。
その際にエンジンが回っているとエンジン内部までゴミを吸い込んでしまい、トラブルが増えてしまいます。
実はこのカットオフスイッチ、コネクターまでは標準装備されていることは皆さんご存知でしたか?

さて、機関/外装ともに完全リフレッシュされた748Rを試運転してみました。
 
低速から高速までよどみなく回ります。
交差点を曲がる際に回転がドロップしての立ち上がりもスムーズで、
748R特有の軽やかな回転上昇を見せつつピークまで一気です。
(996Rや998Rでは桁違いのトルクで怒濤の加速を見せますが、
748Rの独特なスムーズさはまた格別です)
 
STMのスリッパークラッチはストリートにおいてもショック無くスムーズに
スリッパー機構が作動してくれます。純正スリッパークラッチでは
サーキットでは問題ないものの、ストリートではちょっと違和感があり
STMのEVO程スムーズには行きません。
※しかしいくらSTMのEVOでも最低限の操作(タイミング合わせ)は必要です
 
さて、懸案だったフロントのみマグホイールを奢った足回りですが、
ズバリ狙い通りで、新型ディアブロスーパーコルサSPとの相性の良さも
手伝って、非常に軽快になりました。
軽快感と接地感という相反する要素を見事に両立させた、
電光石火の切り返しがピシャリと決まるハンドリング
を得ることができました。
 
リアホイールをノーマル5.5インチのままにしたのは
サーキットでは上りの切り返しでリアブレ-キを積極的に利用し
旋回時の倒れ込みを積極的にコントロールしてやる時に
STDの重さの方がやり易いのです!峠ではキツイ下りの
 タイトコーナーでこの技を利用します!!
  
ただしリアブレーキはフェードしやすいので
  リアブレーキペダルの位置をしっかり検討して決めないと
  いけません!リアブレーキを効果的に利用するのは
  DUCATI車全般にあてはまります!!
 
鋳鉄ローターに関してはローターが暖まっている状態で高速域からの減速フィーリングが
ポイントなのでサーキットに持ち込まないと真価が解りませんので、ここは後の楽しみに
とっておきましょう!

というわけで、組んだ自分で言うのもナンですが(笑)、
乗り易くて速い、痛快ハンドリングを持つ748Rが完成しました。

サーキット走行会を企画しなきゃ…(笑)

748Rに限らず、水冷4バルブドゥカティにお乗りの方で
ご自分のバイクになんとなく気になる点があるという方はご相談下さい。
調子が悪いわけではないが、本調子なのかどうか知りたいなど…
 ただし、
必ず実車両を見ながらの打ち合わせ、お見積りとさせて頂きます
予めご了承下さい。
 
基本工賃などにつきましては、作業メニューをご覧下さい。

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